第3章 不登校対策を問う

第2章で、文科省の不登校対策の基になっている「問題行動等調査」が不登校の子どもたちの思いと大きくかけ離れていることを指摘しました。第3章「不登校施策を問う」では、文科省の行ってきた不登校対策の有効性、妥当性について考えます。

1.  文科省が行ってきた不登校対策

まず、文科省が行っている不登校対策を見てみましょう。次の資料を見てください。

資料1【文科省による不登校児童生徒への支援、施策】(調査研究協力者会議への提出資料から)

〇教育支援センター(適応指導教室)の設置の推進

 ・不登校児童生徒の社会的自立に向けた指導・支援を担う「教育支援センター(適応指導教室)の設置の推進            (令和元年度:1,527施設⦅H30:1449施設⦆) 

〇不登校児童生徒を対象とした学校の設置に係る教育課程の弾力化(不登校特例校)

 ・不登校児童生徒を対象として、その実態に配慮した特別の教育課程を編成する必要があると認められる場合、指定を受けた特定の学校において教育課程の基準によらずに特別の教育課程を編成      【特区措置を平成17年7月6日付け初等中等教育局長通知により全国化】

〇教育相談体制の充実

 ・不登校を含め様々な課題を抱える児童生徒への相談体制の強化に向け、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置やSNS等を活用した相談体制の構築を推進

〇指導要録上の出席扱いについての措置等

 ・小・中・高等学校の不登校児童生徒が教育支援センター(適応指導教室)や民間施設など学校外の機関で指導等を受ける場合や、自宅においてICT等を活用して行った学習活動について、一定の要件を満たすときは指導要録上「出席扱い」にできる

【令和元年10月25日付け初等中等教育局長通知(義務教育)】

【平成21年3月12日付け初等中等教育局長通知(高等学校)】

資料2 【文科省通知  令和4年6月10日】

「不登校に関する調査研究協力者会議報告書~今後の不登校児童生徒への学習機会と支援の在り方について~」について(通知)

「令和3年9月より、文部科学省において「不登校に関する調査研究協力者会議」を設置し、今後重点的に実施すべき施策に関する検討を行い、今般、その報告書が取りまとめられました。」

〇教育機会確保法及び基本指針の学校現場への周知・浸透

〇心の健康保持に関する教育の実施及び一人一台端末を活用した早期発見

〇不登校傾向にある児童生徒の早期発見及び支援ニーズの適切な把握のための、スクリ

ーニング及び「児童生徒理解・支援ノート」を活用したアセスメントの有機的な実施

〇不登校特例校設置の推進

〇学校内の居場所づくり(校内の別室を活用した支援策)

〇フリースクール等民間団体との連携

ICT等を活用した学習支援等を含めた教育支援センターの機能強化

〇教育相談の充実(オンラインカウンセリングを含む)

〇家庭教育の充実

〇その他

    *学校外における学習活動や自宅におけるICTを活用した学習活動について、一定の要件の下、指導要録上の出席扱いとなる制度について、校長を含め教職員への理解が進むよう、研修等において周知徹底を図っていただくよう、お願いします。

 

 資料1「文科省の不登校施策」と資料2「文科省通知(令和4年6月10日)」から分かるように、文科省の不登校支援は不登校の子どもたちへの相談支援(相談体制の整備)と学習支援(学習の場の確保)の整備が大きな柱になっています

 教育支援センター(適応指導教室)、不登校特例校、ICTを使った学習活動、フリースクール等の民間団体との連携などは学習の場の確保・保障の為です。スクールカウンセラーやソーシャルワーカーの配置は、教育相談を行うためです。こうした対策が、ずっと続けられてきました。

 

2023年8月26日の京都新聞に次のような記事が載っていました。(最新の不登校対策)

文部科学省は、空き教室を活用して学校内で不登校児童生徒をサポートする「校内教育支援センター」を拡充するため、新たに設置する自治体に必要経費を補助することを決めた。クラスの中に入れない子どもにも学校内の居場所や学習環境を確保するのが狙い。来年度予算案の概算要求に5億円を計上する。

 

 「校内教育支援センター」は初めて聞く名前ですが、目新しいものではなく、これまでの保健室登校や別室登校などの呼び方を変えたものと言っていいでしょう。

「教育機会確保法」準備段階で考えられていたフリースクール等の学校外での学習の場の保障という構想が頓挫した揚句に出て来た学校内での居場所づくり「校内教育支援センター」が最新の不登校対策のようです。そのために、来年度、5億円かけて全国に広めていこうということです。(1校当たり2万円です)

記事は、各地の自治体が進めている支援についても紹介しています。一人一台配備されたデジタル端末などの情報通信技術(ICT)を活用したり、民間フリースクールのノウハウを取り入れたりして多様な学びの場を確保し、「誰も取り残されない教育」の実現を目指しているそうです。次に挙げるのは各地の「校内教育支援センター」の例です

 ○「ステップセンター」・・・福岡市

 ○「ぱれっとルーム」・・・・埼玉県戸田市

 ○端末ででの支援・・・・・さいたま市         などなど

 「校内教育支援センター」という新しい言葉を使って、新たな取り組み(対策)を装っていますが、従来の対策(別室登校・別室指導など)のコピー・延長です。

2.不登校対策への子どもたちの反応

では、不登校の子どもたちは、これらの相談支援・学習支援をどのように受け止め、どのように利用しているのでしょうか。次の資料を見てください。学校内外の施設や機関を利用した小中学生の人数です。

資料3「相談・指導を受けた学校内外の機関等」(文科省・「問題行動等調査」から抜粋)

相談・指導を受けた学校内外の機関等

小学校(人)

中学校(人)

合計(人)

教育支援センター(適応指導教室)

7283

17926

25209

教育委員会所管の機関

8516

9237

17753

児童相談所・福祉事務所

4443

6530

10973

保健所・精神保健福祉センター

592

744

1336

病院・診療所

12302

21981

34283

民間団体・民間施設

4021

5108

9129

上記以外の機関

1943

2810

4753

養護教諭

15051

28476

43527

スクールカウンセラー・相談員等

30716

54700

85416

相談・指導を受けていない

26943

61997

88940

 

次の資料4は、不登校の子どもたちが、不登校になり始めた頃に誰に相談したかを尋ねたものです。文科省が不登校当事者を対象に実施した「実態調査」を基に作成しました。

資料4 不登校になり始めた時に相談した相手」

相談した相手

小学生%

中学生%

学校の先生

13.3

15.0

保健室の先生

7.7

6.9

学校にいるカウンセラー

8

7.4

友達

7.6

10.6

家族

53.4

45.0

電話相談やSNS相談の相談員

0.4

1.4

その他

3.2

3.2

誰にも相談しなかった

35.9

41.7

無回答

2.7

3.6

 

 

 

 

 

 





















 
 相談・指導施設や機関には、医療機関をはじめ保健室の先生、スクールカウンセラーなど様々な施設や機関が列挙されていますが、ここでは、主に学習支援をしている「教育支援センター(適応指導教室)」やフリースクールや塾などの「民間団体・民間施設」と相談活動を主な内容としている「相談施設・機関」とを分けて考えることにします。

○相談施設・機関の利用

 子どもたちが、もっとも多く利用しているのはスクールカウンセラーです。その次に多いのは養護教諭です。スクールカウンセラーは子どもや親の心理的ケア―のために配置されていて相談しやすいのでしょう。また、保健室は教室に居づらい子どもたちの避難場所でもあり、養護教諭は体や心の悩みを話しやすいのだろうと思われます。

 次に多いのは、「病院・診療所」です。子どもが学校に行きにくくなった時、子どもたちの多くは朝、起きられないこととか、身体の不調を訴えることがあります。そんな時、親は、子どもの体を心配し病院へ行き、診察してもらうのは自然な成り行きです。相談機関の利用状況からは、子どもの心身の状況を心配し病院を受診する親の様子がよく分かります。また、養護教諭やス相談クールカウンセラーが子どもたちの身近な相談相手として活躍しているのが伝わってきます。

 児童相談所や保健所、福祉事務所あるいは教育委員会・教育センター所管の機関等は、通常、学校のすすめがあって相談を申し込むので、自ずと利用者数は限られてくるのでしょう。

 ○支援施設・機関の利用

 文科省が不登校対策として力を入れている「教育支援センター(適応指導教室)」は、相談機関というよりも学びの場あるいは居場所としての支援機関と言えるでしょう。その利用状況は、小学生7283人(8.9%)、中学生17926人(10.1%)です。

 同じく民間の支援施設・機関としてフリースクール等がありますが、その利用状況は、小学生4021人(4.9%)、中学生5108人(3.1%)です。

 二つの施設・機関の利用者を合わせると、小学生11304人(13.8%)、中学生23034人(14.1%)、合計34338人(14.0%)です。

 しかし、支援機関の利用が、不登校の子どもたちの数に対してわずか14%で、「教育支援センター」だけでは一割程度に過ぎません。つまり、不登校の子どもたちのほとんど(86%)が、支援施設や機関を利用していない、または、利用できていないのです。このことは、文科省が特に重点を置いて進めてきた不登校対策が、不登校の子どもたちの為に、ほとんど役に立っていないことを物語っています。

さらに、不登校の子どもの三人に一人が、誰にも、何処にも、「相談・指導を受けていない」ことと併せて考えると、多くの不登校の子どもが支援の枠外に置かれていることが分かります。

不登校対策において、「誰も取り残されない教育」という文言が使われていますが、不登校の子どもたちのための不登校対策が子どもたちの手に届いていないことが「問題行動等調査」から分かります。

 

(2)「実態調査」から分かること

次に、「実態調査」を見てみましょう。「実態調査」には、不登校の子どもたちがどのような支援を望んでいるかを考える興味深い調査があります。それは、①不登校になり始めた時に「相談した相手」を尋ねているもの、さらに、②「どのようなことがあれば休まなかったと思うか」や ③どうすれば「学校に戻りやすいと思うか」などを尋ねたものです。

それらを見て、考えてみましょう。ただ、ここでも、「問題行動等調査」との乖離があります。そのことを念頭に調査結果を見る必要がありますが、不登校の当事者の行動や思いが反映されている点では、対策や支援を考える上で貴重な資料と言えるでしょう。

 

不登校になりかけた時、子どもたちが相談したのは「家族」です。小・中学生ともに半数が家族に相談しています。子どもの一番身近な存在で、一番かかわりの深い家族が一番の相談相手になることは至極当然なことでしょう。それに続くのは、「学校の先生」(小学生13.3%、中学生15.0%)です。先生は子どもにとって家族に次ぐ身近な存在であり、先生にとっては教え子であることからも、家族同様に身近な相談相手となるでしょう。「家族」も「学校の先生」も相談機関ではないから「問題行動等調査」には表れませんが、子どもにとって大切な相談相手であることが分かります。ただ、「学校の先生」の割合が親に比べても少なすぎるのは気がかりです。

次に子どもたちが相談したのは、「友達」、「学校にいるカウンセラー」、「保健室の先生」です。この三者には、それぞれ7~8%の子どもたちが相談をしています。

「実態調査」では、「学校にいるカウンセラー」や「保健室の先生」に相談した子どもの数は、「問題行動等調査」に表れた程には多くないようです。これは、子どもたちが保健室に行くのは、相談するというよりも、教室からの避難、休憩場所として行っているからではないかと推測できます。また、カウンセラーへの相談は、自分から進んでするというよりも先生や親から進められて相談に行くことが多いからではないかと思えます。

この調査からは、子どもにとって「家族」や「学校の先生」、そして、「友達」は、やはり、身近で、かかわりが深く、頼りにしている存在だということが分かります。

しかし、「実態調査」からも、小学生の35.9%、中学生の41.7%もの子どもたちが、誰にも、何処にも相談しないで、指導も受けていないことが分かります。これほどの子どもたちが、いわば、一人で問題を抱え、悩んでいるのです。調査結果に大きな乖離のある「問題行動等調査」と「実態調査」ですが、この点だけは一致しています。

 

ここでは、不登校になりかけた時、どのような働きかけや支援があったら学校に通えたかいうことを尋ねています。

 どのようなことあれば不登校にならなかったのだろうと期待を持って見たのですが、驚いたことに、「特になし」と答えた子どもが小学生55.7%、中学生56.8%もいたのです。半数以上の子どもたちが働き掛けや支援を望んでいないか、あるいは、期待していないのです。

「特になし」とは、たとえ、何らかの支援や働き掛けがあったとしても、不登校になっていただろうし、不登校になるのを防ぐ術や手立てはなかっただろうと言っているのでしょう。多くの子どもたちがこのような思いを持っていることを、強く受け止めなければなりません。

しかし、一方、少なくない子どもたちが、家族や友達、先生など、身近な人たちからの働きかけや、「個別に勉強を教えてもらえること」を期待し、拠り所としていることも分かります。ここに一縷の光を見る思いです。

資料5 「どのようなことがあれば休まなかったと思うか」

 

小学生%

中学生%

学校の先生からの声かけ

11.4

8.7

学校にいるカウンセラーと話をすること

4.8

6.2

友達からの声かけ

15.1

17.4

家族からの声かけ

8.6

6.7

学校以外の相談窓口(市の相談センターなど)に行くこと

2.7

1.5

学校以外の相談窓口に電話やSNSで相談すること

1.4

1.7

クラスとしての活動、文化祭、運動会などに参加すること

5.0

4.8

部活動などに参加すること

2.2

4.3

個別で勉強を教えてもらえること(学校以外も含む)

9.3

9.1

自分以外の家族への働きかけや手助け

2.5

2.5

その他

8.4

9.9

特になし

55.7

56.8

無回答

4.1

3.5

 

3)どういう支援や働き掛けがあれば学校に戻りやすいか

 【小学生】

先生の家庭訪問

4.2%

先生とインターネットや電話で話すこと

4.1%

学校にいるカウンセラーと話をすること

5.0%

友達からの声かけ

17.1%

家族からの声かけ

8.3%

学校以外の相談窓口(市の相談センター等)に行くこと

2.4%

学校以外の相談窓口に電話やSNSで相談すること

1.1%

個別で勉強を教えてもらえること(学校以外も含む)

10.7%

自分以外の家族への働きかけや手助け

2.7%

その他

5.2%

特になし

57.1%

無回答

5.9%

【中学生】

先生の家庭訪問

6.2%

先生とインターネットや電話で話すこと

3.9%

学校にいるカウンセラーと話をすること

7.1%

友達からの声かけ

20.7%

家族からの声かけ

7.5%

学校以外の相談窓口(市の相談センター等)に行くこと

1.4%

学校以外の相談窓口に電話やSNSで相談すること

1.9%

個別で勉強を教えてもらえること(学校以外も含む)

13.4%

自分以外の家族への働きかけや手助け

2.7%

その他

5.1%

特になし

54.4%

無回答

5.6%

次は、不登校状態にある子どもたちに、どういう支援や働き掛けがあれば学校に戻れるかを、を尋ねたものです。資料を見て分かるように、先の「どのようなことがあれば学校を休まなかったか」と同じような傾向を示しています。ここでも「特になし」が突出していて、小学生の57.1%、中学生の54.4%と半数以上を占めています。

学校に戻るために「友達からの声かけ」(小学生17.1%、中学生20.7%)と「個別で勉強を教えてもらう」(小学生10.7%、中学生13.4%)ことを少なくない子どもたちが望んでいることが分かります。ここでも、友だちの存在、友だちとの関りが子どもにとっていかに大事かが分かります。そして、勉強が分かることも学校に戻るための重要なことであることも。

他にも、「先生の家庭訪問」、「先生と話すこと」、「先生からの声かけ」や」カウンセラーと話すこと」など先生やカウンセラーとのかかわりを望んでいる子どもたちもいます。

4)学校を多く休んだことに対する感想

  小学生

もっと登校すればよかったと思っている

25.2%

登校しなかったことは、自分にとって良かったと思う

12.8%

しかたがなかったと思う

16.8%

何も思わない

18.1%

分からない

21.2%

無回答

5.9%

中学生

もっと登校すればよかったと思っている

30.3%

登校しなかったことは、自分にとって良かったと思う

10.3%

しかたがなかったと思う

15.3%

何も思わない

15.2%

分からない

22.6%

無回答

6.4%

この設問は、不登校の子どもたちが学校を休んだこと、不登校になったことをどのように受け止めているかを尋ねたものです。不登校の当事者が不登校をどう認識しているかを知ることができます。ただ、この問いに答えているのは、不登校只中の子どもたちですが、教育支援センター(適応指導教室)通えている子どもたちです。家から出ることができない子どもに比して、教育支援センターに通えるだけ不登校の状態としては良好な状況にあると言える子どもたちが答えているということを念頭に置いて調査結果を見るといいと思われます。

           「もっと登校すればよかったと思っている」子どもたちは、小学生25.2%、中学生30.3%です。

           これに対して、「登校しなかったことは、自分にとって良かったと思う」と不登校を肯定的に捉えている子どもたちは、小学生12.8%、中学生10.3%です。

           また、「しかたがなかったと思う」というように不登校になったのは避けられなかったと感じている子どもは、小学生16.8%、中学生15.3%です。

           そして、「分からない」と回答したのは、小学生21.2%、中学生22.6%です。不登校只中で、この先どのようになっていくか分からず、自らの不登校をどう評価するか判断できない状況の中で「分からない」という回答は、子どもたちの不安な心情を素直に表しているのかもしれません。

 不登校に対する子どもたちの評価は様々です。不登校を否定的に捉える子もいれば、不登校を肯定的に捉えている子もいます。そして、しかたがなかったと不登校を必然と捉えている子もいます。不登校の子どもたち一人ひとりが、それぞれ、学校に行けない状況の中でも自分を見つめ、自分の思いや考えを育てながら、不登校の時を過ごしていると捉えるの妥当かも知れません。

 

3.子どもたちが利用していない不登校対策

(1)子どもに響かない不登校対策

以上、不登校の子どもたちの不登校施策の利用状況を見てきました。そこから分かることは、施策を利用できているのは限られた子どもたちであって、多くの子どもたちは施策と無縁の状況にあるということです。つまり、不登校施策が子どもたちの状況に合っていないということです。

           どの相談施設・機関にも相談していない小・中学生が88931人((36.3%)もいる(問題行動等調査)こと。これは、「実態調査」の「誰にも相談しなかった〈小学生35.9%、就学生41.7%〉に符合しています。

           ア.「どのようなことがあれば休まなかったと思うか」、イ.「学校に戻りやすいと思う対応」(実態調査)に対して、半数以上の子どもたち(アは小学生55.7%、中学生56.8%、イは小学生57.1%、中学生54.4%)が「特になし」と答えています。

           学校以外での学びの場である「教育支援センター(適応指導教室)」の利用は、小学生7283人(8.9%)、中学生17926人(10.1%)、小・中学生合わせて25209人(小・中学生の10.3%)です。

           民間団体、民間施設の利用は、小学生4021人(4.9%)、中学生5108人(3.1%)、小・中学生合わせて9129人(小・中学生の3.7%)です。

文科省の不登校施策の大きな柱である学校外の支援施設・機関③「(教育支援センター

(適応指導教室))」と④「民間団体、民間施設」を利用している子どもは、小・中学生34338人で全体の14.0%です。

文科省の不登校対策は、相談・支援体制と教育保障体制の整備が大きな柱ですが、これが施策の実情です。不登校対策は有効でないと言えるでしょう。 

(2)それでも続けるあの手この手(その場しのぎの対策)

 さらに、文科省が近年、特に力を入れている不登校特例校などについて見ておきましょう

夜間中学校や不登校特例校の設置は、近年、文科省が力を売れて進めている対策です。夜間中学校は、学び直しの場として、中学校を卒業した後も利用することができます。資料がなく、詳しくは説明できません。

不登校特例校は、不登校経験者を対象とした人たちが通える学校で、小学校、中学校、高校で、現在、全国で10自治体にあり、21校が指定されています。その内訳は、公立が12校、私立が9校です。2022年5月現在、小学校1校、中学校15校、高校3校、その他2校です。利用者数などの資料がありませんので、詳しいところはわかりません。(ちなみに、2016年1月時点で、小学校1校、中学校6校、高校2校あり、在籍者数は729人でした。中学校は9校、高校は1校増えているので、在籍者数も学校数に合わせて増えていると思えます。)

不登校特例校や夜間中学校は、設置に積極的な自治体や学校法人に集中しているようで、全国的に一般化していると言えるような状況ではないようです。

このほかに、学校以外の学びの場としてフリースクールがあります。2019(令和元)年の調査では、フリースクール252、親の会10、学習塾10、その他79、計351のフリースクールが存在しているそうです。(その他とは、特色ある教育を行う施設などを言うそうです)

また、教育委員会と連携している民間の団体や施設が351あります。2021年度の「問題行動等調査」によると、その利用者は、小学生4021人、中学生5108人で、合計9129人で、小学生の4.9%、中学生の3.1%、小・中学生の3.7%が利用していることがわかります。

夜間中学校、不登校特例校に力を入れている背景には、フリースクールなどの学校以外の学びの場を認め、広げようとした「教育機会確保法」で、その柱だったフリースクールが、自民党内の保守勢力の反対で認められなかったという事情があります。だから、文科省は、学校以外の学びの場を躍起になって探しているように映ります。

不登校の急増を受けて、2023年3月31日、文科大臣は緊急対策を打ち出しました。①端末を利用した早期発見 ②不登校特例校の設置 ③オンライン学習を内容とする不登校対策です。(しかし、これは、2022年6月に出した「不登校対策」のコピーでしかありません。)

そして、2023年8月26日、クラスの中に入れない子どもにも学校内の居場所や学習環境を確保することを狙いとして、「校内教育支援センター」を作るために、来年度予算案の概算要求に5億円を計上すると発表しました。

           情報通信技術の活用

           不登校特例校

           校内教育支援センター

これらが、現在、文科省が推し進めている不登校対策の柱です。果たして、不登校の子ど

もたちがどういう反応を示すのでしょう。

 「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」ということわざがありますが、ただ、むやみやたらにやってみても、不登校問題の本質が分からないでは、どんな手を打っても効果は期待できないでしょう。何よりも、不登校の子どもたちがせっかく声を上げたのに、聞こうともしない有識者・「協力者会議」に不登校問題の本質は理解できないでしょう。そして、まともな対策が考えられるはずもありません。

 また、不登校の子どもが30万人になったというのに、未だに子どもや親にその原因を押し付け、条件・環境整備もしないまま「学校以外の場で学んでもよい」というのは、荒海に赤子を放り出すようなものではないでしょうか。不登校の子どもを切り捨て、見捨てる教育政策が現在、進んでいると言えるでしょう。